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未成熟の成長

第2章 コンクリート



三日目<観測者A>


枯れきったけやき並木。

寒さが身に染みる。

レンガ造りの校舎を通り過ぎ、俺は目的の人物を探した。

その少女は休憩所のベンチに座り、本を読んでいた。

年齢には不相応だが、光沢博士の《散る桜、夜の隙間に》とはなかなかいい趣味をしている。


「彼は言う。自由が掴めないのは、束縛を手離さないからだ」

「そんな彼は戦争で両腕をなくしていた」


少女は綺麗な顔立ちをしていた。

日本人、ではないだろう。

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