未成熟の推察
第1章 ミク
「私には友達がいたんです。いつも一緒だった。楽しい時も嬉しい時も」
ミクは信号を待ちながらユラユラと揺れる。
「あの子はいい子だった。優しくて、気遣いが出来て、それに可愛いかった」
「ミクよりか」
「同じくらい。それにね、私と凄く似ていたの。鼻の形とか、瞳の色とかね。ほら、私は日本人っぽくないじゃないですか」
灰は黙って聞いていた。
人のはなしを聞くのは好きな方で、ましてミクの話となれば真剣そのものだった。
信号は青になったが、二人とも歩こうとはしない。
「あの子はね、でも、二年前の事故で死んじゃったんだ。死んで初めて分かったの。私とあの子は……」
ダンプカーが二人の前を横切った。
灰はミクの口の動きから、何を喋っているのか理解していた。
それは情報でしかなく、真実かは分からない。
それでも灰の意思は変わらなかった。
「そうか。もうすぐ着くからな。歩こう」
「これ、大事な話なんですよ。もう」