未成熟の推察
第1章 ミク
老人は笑いながら、ゆっくりとその場に倒れ込む。
「はぁ……し…ぬのかなぁ。やるじゃねぇか……わけ…ぇ……の」
「致命傷じゃねぇよ。心臓は外した。あんたにはこれから治療を受けて貰う」
「殺しといて…助け……ぐ…るのかよ……分からねぇ…な」
「分からなくていい」
老人の意識は途絶えた。
近くのホームレスが数人こちらに意識を向けたが、匠を見るや否や段ボールハウスへ引き返していく。
「一人じゃ、きついな」
匠は知り合いの番号を入力し、返事を待つ。
「黒木か? 俺だよ、code456。ちょっと運んで欲しいものがあるんだ。すぐ来てくれ。場所は……」
サイレンサーつきだから、警察が来るのはもう少しあとだろう。
それまでに人目のつかないところに隠す必要があるな。
匠はホームレスを背負い、公園を後にした。
その後ろからついてくる黒服には、気づいていなかった。