未成熟の推察
第1章 ミク
「お前の、ような奴を、何て、言うか、知ってるか、匠」
「分からんな」
「人でなしだ。人でなし。勤務でも、ないのに、重症の、怪我人。しかも、例の、カメラも、使いたい。馬鹿か!」
黒木は激怒していた。
表と裏の両方の仕事を任され、混乱していたのかもしれない。
だがこの男が落ち着いていることなど殆どない。
泣いているか、怒っているかのどちらかだ。
「俺だってこんなことはしたくない。でも津田さんの依頼なんだよ」
「津田、津田、その名前、聞きたくねぇ。今度言ったら、こいつを、殺すからな」
「構わん」
黒木はメスを持ちながらおっかないセリフを吐く。
だが匠は知っていた。
黒木が患者を傷つけることなど一度もない。勿論、これからもだ。
性格はいかれているが、黒木は医療に嘘はつかなかった。
彼の唯一の誇りであり、楽しみであり、趣味だからだ。
夕御飯でも作るかのような手軽さで、ホームレスを処置していく黒木。
「匠、事務室で、待ってろ。お前、汚れてるから。あと、コーヒーは、二杯までなら、飲んでいい」
「サンキュー」