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「再会」と呼べる「出会い」

第19章 廃墟と花嫁

「私はいいの
 …これで

 だからミカだけ
 行って」

エミが柔らかく微笑む。


顔、
ノーメイクだ。




化粧なんかしていなくても
エミはやっぱり美人だよ。


「ちょ…
 私はいいってば!」

「いや…!!」


私はエミの
空いている手を握った。

一緒にここから出るんだ

そう強く思った。


「…なんかミカ
 人が変わったみたい
 強くなった?」

「今までのままじゃ 
 ダメなの」

「…」



自分を強く持つ。
もう、簡単に
流されたりなんかしない。


「分かったわ
 けど待って

 この格好じゃ
 外に出た時マズいもの」

「あ …うん」


裸に、布一枚。
改めて見ると凄い格好だ。


エミは部屋の隅に行くと
元々着ていたであろう
下着、そしてワンピースを
身につけた。

壊れかけた椅子の上から
私が落としていった
百合のブーケを手に取る。


「これ
 いるんじゃない?」

「え いいよ」

「そう?
 凄く綺麗」

そう言って
エミは鼻を近づけた
…すると


「…」

エミが目を見開き、
固まった。

「エミ?!」


「ぁ …あ」



足を震わせ、
その場に崩れる。



「!」


私は息をのんだ。


エミのワンピースの裾から
何かが這いだしてくる。

それは人型をしていた。

薄暗くて
シルエットだけだったが
禿げ上がった頭に
尖った耳が不格好に
くっついているのが見える。
小さな角のようなものもある。



グゲェ… グゲェ



不気味な音を発しながら
それは這い出てきた。

「これが
吸精鬼 なの?」





 ド サ ッ


エミが倒れた。



その生き物はヨロヨロと
床を這っている。

「!


 …えいっ!!」



  バ ゴ ッ

私はたまたま
近くに落ちていた
本のようなもので
吸精鬼を思い切り叩いた。

ゴキブリを叩き潰す
感触って
多分こんな感じなんだろうな…。



潰した吸精鬼は
腹部が破裂したようになり、
何かの汁が
その周りに飛び散っていた。

嗅いだことのない臭気に
少し気持ち悪くなる。

私は叩きつけた本を
そのまま吸精鬼に
被せた。


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