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「分かんないんだよね
なんでストレートに
関係を築けなかったのか

お互いが
好意を持っているって分かる
これ程幸せな事はないよね
なんで他所に目ぇ向けんの？
さんざんあちこちに
傷跡を付けてまで」

「逃げたくなった」

「逃げたくなった？」

「親同士の繋がりとかもあって
エミとそういう関係になれば
俺はあの怪物みたいな家に
増々締め付けられる

俺は“家”を避けて来た
その為にサッカーで名前を
挙げて自立してやるって
親に認めて貰うって」

「怪物みたい か
成る程確かにそうかもな
でも小さい頃から
覚悟してた事じゃないのか？」

俺は井崎を見た。
御曹司ってのは
生まれた時からそういう風に
育て上げられるもんじゃないのか？

「覚悟なんてしてねーよ
自分がそうなる って分かったのは
俺が中2の時
親父が死んだ時だった」

「？」

「俺はそれまで
普通の家で育ってた

実は
母親が今の父親の愛人だったんだ
“話”としてはよくある事だろ？
つまり死んだ親父は
本当の父親じゃなかったんだ」

「そうだったのか
…辛い思いしたんだな」

「辛い か
まー多感な時期ってヤツだったし
俺は最初認めなかった
記憶に残るのは
いつも側にいて
楽しくて優しかった
俺を育ててくれた親父だ

本当の父親だと言われたところで
会ったこともなかったしな

いきなり出てきやがって
認められるわけねーだろ」

「そうだね
君の心を荒らす原因としては
大きかったわけだ」

「エミとはそんな時に出会った
井崎の家で年が近いからって
紹介されたのがエミだった

最初は内気で自分から喋る事は
なかったけど
エミも自分の境遇に
納得してない所があって」

境遇… 政治家一家のお嬢様か。
恵まれてるようにしか
思えないけど
本人からしてみれば
そうでもなかったってことか。
交遊関係とか色々、
制約ありそうだしな。
自由 ではないだろうな。