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「再会」と呼べる「出会い」

第20章 見送る人

ガ チ ャ



「 …」

入口のドアを開けた佐伯が、
次朗と井崎の重なった手を見て
固まった。

しかし
すぐにフワリと表情を崩す。
佐伯は何も言わず、
次朗の隣に座った。

「エミとの事
悪かったな
…仲良かったのに」

「うん
 でも もう大丈夫」

井崎の謝罪に、
佐伯は晴れやかな表情で応えた。

それはドアの向こうで、
一度壊された筈の友情が
修復された事を示していた。



「ちゃんと
お別れしてきたよ」


マスターが佐伯の前に
紅茶とクッキーを出した。


「なんだか
前より仲良くなれた気がする」


ありがとうございます

マスターに微笑みかけると、
佐伯はカップを口に運んだ。


「そう」

こちらからは見えないが
次朗は佐伯に
微笑みかけたに違いない。

佐伯もそれに応えるように
微笑んだ。


「優司君
 女の友情って
 言われてるより
 もろくないのよ」


そう佐伯に言われ、
少し驚いた井崎だったが
すぐに表情を崩した。


「ハハ
 なんかミカ性格変わったな
 惚れ直しそうでやべぇ」

「ゆーちゃん
 気持ちは分かるけど」

「悪い 悪い
 冗談だって!」



ぽ ん


次朗の肩に井崎の手が重なる。


「ミカ
 こいつって独占欲強いだろ?」

「うん
 異常なくらいだよ」


「…くく っ
 確かに“異常”かもな」


「兄さんまで」


俺まで
思わず笑いがこぼれた。




苦しい経験、悲しい経験は
時に絆を一層強くする。

憎み合う相手同士すらも、
その奥にある
相手自身を見つめることで
関係は改善される事がある。


俺は神鳥の言葉を思い出した。


『いいの…かな?
 敵なんだよ 人類の』


迷いながらも
信じたいと願う彼女を
俺は否定できない。


滅亡を企む、
その奥に何があるのか、
俺もエレミムの真意が
知りたかった。
かつてのエレミムを
知らないとしても。




*…*…*…*…*…*…*

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