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「再会」と呼べる「出会い」

第20章 見送る人

「ゆーちゃん 悩んでるでしょ?」


隠土次朗とは
ミカがきっかけで友達になった。

俺はこいつに、ミカを取られた。
けど浮気ってわけでもないんだよな。
ミカはそもそも
次朗の事が好きだったんだし、
俺とは無理矢理付き合ってもらってた
っていうのが実のところ正しい。
『はじめて』は俺がもらったけどな。

そんな俺らが友達になれたきっかけは、
次朗の「友達になろうよ」
という一言だった。

普通ならあり得ない事だが、
俺は承諾した。

何故か、
こいつには自分をオープンに
出来る気がしたんだ。

やたら勘もいいし、
見てたのかよって位
俺の事を分かっている。
考えてることも。




「言ってごらんよ
少しはスッキリするかも
一人で抱えるなって
言ってるじゃない」

次朗は安心させるように、微笑んだ。
綺麗な顔でこんな表情されると、
ノンケなはずの俺でもドキドキしてくる。
次朗はその辺のイケメン俳優にも
劣らない位、見た目が整っていた。
そしてどこか、妖艶だった。

「出来ることなら力になるよ」

「いや」

友達の母親が病気で死ぬ
とか、重すぎるだろ。

「…」

次朗が俺を見る。


「んな っ…!
見るなよ」

午後の駅前、
人通りはそこそこ。
俺達はなかなか来ない定食を待っていた。

「見るなって言われても
 向かい合って座ってるし」

「あーそうだったな」

俺は窓を見た。
これ以上目を合わせていたら
ヤバい気がした。

「お前はどうなんだよ
 悩みとかないのか?
 ミカと付き合っててどうよ
 アイツ不感症… っぐ!!」


顎をわしづかみにされた。
なんだよこの力

「ご心配なく」

冷ややかに笑う目に
俺はぞっとせずにいられなかった。
こいつ、根に持っていやがる。
…だよな、ま、当たり前か。

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