テキストサイズ

「再会」と呼べる「出会い」

第20章 見送る人

車内で泣き崩れる私に
優司君は何も言わずに付き合ってくれた。

「…ごめんなさい
 泣いたりして」

「いや
 少しは気が済んだ?」

「…うん」

そもそも泣く理由が自分でも分からない。

首にかけられた
ハチマキ石のペンダント、
触れると感じる冷たさは
どこか懐かしかったが
その理由も全く思い当たらない。

「次朗のことを思い出せないって
 …本当なのか?」

「…うん」

一体 次朗…君って誰?

「頭ぶつけた?とか?
 にしては身体平気そうだしな」

車は海浜公園で止まった。

「少し歩かねぇ?」

「うん」

私達は車を降りて海沿いを歩くことにした。

公園の近くには博物館があり、
先日大王イカと深海魚のイベントが
あった時に両親と来たのが記憶に新しい。
確かバッタリリョウ君がに会って
…あれ?

「どうした?」

立ち止まる私を、
優司君は不思議そうに見つめた。

「何か思い出した?」

「ううん 何も」

優司君は苦笑すると私の前を歩いた。
少し行くとベンチがあり

「あー…ここだっけ」

そう言うと優司君は腰を降ろした。
私は隣に座った。



「思い出さねぇ?」

「…」

何を?

「わ」

ドキッ

顔を上げると
優司君の顔が目の前に迫っていて驚いた。

「こういうシチュエーション」

「ぇ」

近付く唇

「…っあち!!!」

バチ!
静電気?!

「え ゆーじくん大丈夫?!」

優司君が唇をおさえた。

「あ うん
 いやそんなつもりねーよ
 ったく
 何なんだよアイツ」

「?」

ハチマキ石がキラリと光った気がした。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ