さよなら、またね。
第1章 澪side
「なんで?」
いろんな憶測が頭の中で飛び交って、その言葉しか出てこなかった。
リビングで向き合った私達。
彼は、下を向いたままぽつりぽつりと話し始めた。
彼には1年前から愛人がいて、海外出張だと言っていた日は、愛人のマンションに泊まっていたこと。
実は海外事業から外されていたこと。
正社員としてバリバリ働いていた私には、プライドが邪魔をしてそれらを話せずにいたこと。
傷ついた彼の心を優しく癒してくれたのが、愛人だったこと。
そして、
愛人が妊娠していること。
今回の有休は、その愛人の悪阻が酷く、看病をするために取ったと言う。
彼の話しが終わるまで、私は黙って聞いていた。