さよなら、またね。
第1章 澪side
「子供が欲しかったの?」
私はぽつりと呟いた。
「違う」
「堕ろせなかったの?」
随分酷い事を言っていると思う。
だけど、婚姻関係を無視してまでも愛人とおなかの子を選ぼうとする彼の真意が知りたかった。
「未来が見えたんだ・・・」
「未来?」
「俺と、彼女と、子供の未来が・・・」
独り言のように小さな声で言った彼。
『私との結婚に未来は見えなかったの?』なんて責める言葉は、喉の奥で噛み潰した。
だって、私も彼との未来は想像できなかったから。
愛がなかったわけじゃない。
だけど、情の方が強かった。
長くいすぎたせいか、それとも最初からなのか・・・
それから1カ月後、私は、彼が持ってきた離婚届にサインした。