さよなら、またね。
第5章 夢から醒めたら
「あなたは今既婚者で、私も離婚が成立したばかり…忘れたほうがお互いのためなのは明らかじゃないですか!」
蒼士を強い視線で威嚇しながら、正論をぶつける。
「そんなのわかってるよ」
……こんな顔する男だったなんて、思わなかった。
蒼士は、困ったように柔らかく微笑んだ。
その美しい表情に射抜かれたように動けない私に、蒼士の長く綺麗な指がそっと触れた。
髪を撫でて、耳にそっと触れる指。
輪郭に沿ってふわりと手のひらで包むと、ほんの少し上を向かせる。
もうその先に何をするかなんてわかり切ってるけど…
逆らえない。
「…澪……」
自分の名前なのに、甘美な言葉を紡いでいるようにしか聞こえない。
相当、病んでる。