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色にでにけり 恋

第2章 ’にほふひと’

ノートにはびっしり書かれた枕詞と、いくつかの短歌。


「できてるじゃないか。ん?」



最後の歌に目が留まった。



『 烏羽玉(ぬばたま)の

 月射す丘の 藤蔭に

朧(おぼろ)白き 君の襟元 』



上出が小さな声で読み上げ、


「まるで恋文だな」


と呟いた。



遥暉が慌てて起き上がりノートを後ろ手に隠した。


ほんのり耳が染まっている。



「遥暉・・・」



上出が名前を呼ぶと、ゆっくり綺麗な顔を上げた。


大きく見開かれた瞳に上出が映っている。



遥暉の黒水晶のような瞳が白い瞼でゆっくり覆われる。



――そんな顔されたらキスしたくなるだろう



遥暉は目を瞑って上出の唇の到達を待っていた。


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