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色にでにけり 恋

第7章 恋文

由美が呟く。


「ヌバタマッて何?」


聡は古典も苦手な妹に解説を付ける。


「烏羽玉は、ヒオウギの黒い実のことだ。その色から夜や黒、月、黒髪、夢につく枕詞だ。」


「枕詞、意味がないってこと?」


「そうだな、でも、この場合は闇そのものを示しているみたいだな。


『闇に月光が差す丘の藤の下に、貴方の白い首筋がボンヤリ浮かび上がっていることだよ。』


つまり夜中の逢引相手に君の白いうなじが綺麗だね。誘ってるの?
と艶めかしい歌なわけだ。


こんな恋文を貰ったら、どうする?」



由美が少し考えるようにして黙り込んだ後、まじめな顔で尋ねる。


「これ、ハルちゃんが作ったの?」


「わからないわ、でも、ハルちゃんの筆跡だからハルちゃんが書いたんでしょうね。」



「藤蔭に・・・・・・。」



「さあさあ、学校へ行く支度をなさい。
聡、それは返してちょうだい。

夕べハルちゃん蒼白な顔して、今朝はあんなに落ち込んでいるのを見たら・・・・・・、お母さん悪ことしちゃったわ。

ハルちゃんに気付かれないように返さなくちゃね。」


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