短編集。
第1章 誘拐犯×お姫様
コンコン
「美雨?ご飯は??」
...。
「ここに、おいとくわね」
部屋に閉じこもって窓の外を眺める日々。
いったい、何年の月日をこうしてきたのだろうか。
『美雨、大丈夫、大丈夫だよ。からなず迎えにいくから。待っててね、美雨』
これは、光喜の声。
「光喜...。」
頭に浮かぶのは、いつも優しく笑いかけてくれた光喜の笑顔。
ブーブブーブッブブブッブー
突然、ノイズが走る。
『おっと...』
「光喜?」
どうやらノイズは王子様のぬいぐるみからで、王子様のぬいぐるみから光喜の声が聞こえる。
『コホンッ』
咳き込む光喜。
『えーっと、たぶんこの音声を美雨が聞いてるとき俺は居ないかもしれないな。
これでいたら、俺恥ずかしいけど!
それで、これ聞いて美雨はきっと泣いて笑ってると思う。』
なんでわかるのさ
泣いて笑ってる僕を、どこかで見てるんじゃないかって思うくらいびっくりした。
『でもね?美雨、居ないっていっても永遠じゃない。俺は、美雨を置いては死ねない。美雨を残して死ぬ覚悟なんてないんだ...だから美雨、待ってて。必ず...か...ず......に...』
うそ!
ノイズが走って聞こえない。
ブーブブーブー
もう、音声は聞こえなくなっていた。
「光喜ぃ~。聞こえないよぉ」
その場に崩れる僕。
「光喜ぃ」