
短編集。
第2章 客×花魁
あれから、いくつかの年が過ぎた今日。
僕は、太夫になっていた。もちろん、心姫も。
二人の太夫がいるこの店ゎすごく繁盛している
もちろん客も、減ることなく増え続けている。
そして今日も、自ら出向いてくれた客の宴に向かっている最中だった。
僕が、早く宴に行っていたらあんなことにはならなかった。
「ちょっと、化粧直しに行ってこよ。
だから、ぬしたちは先に行ってくんなまし」
そう言って、新造達を先に行かせて化粧直しに向かう。
ぐいっ
「っ!?」
いきなり手を引かれ体勢を崩した
体勢を整えることができないと思い、固く目を瞑り衝撃にたえる。
だけど、一向に痛みが来ないので目を開けると
いつの日か目が合い頭を下げた男が目の前にいた。
「何の真似でありんすか?」
あなたの嫁は心姫ではないのですか?
「あんたに会いに来た。」
トクンッ
「ぬしの嫁は心姫であろう?わっちとて、ぬしに興味はありんせん。手を離しなんし」
胸の鼓動を無視して強く言う。
なのに
「心姫は捨てた。俺はあんたと夫婦になりたい。」
心姫を捨てた?心姫は大丈夫なの?
「けちな男だ。女を捨てた日に女を寝とる気でありんすか?
わっちは、もつ身請け先が決まっていまんす。
その花魁を選ぶということは寝取ると同じこと。
ぬしは、それでもわっちを取るのでありんすか?」
この男を僕は好きだった。ずっと、見てた。
心姫に会いに来たとき。心姫と楽しく話してるとき。
ずっと、ずっと見てた。好きになった人が親友と同じなんて。
心姫が紹介してくれる前から知ってたんだ。
それでも僕は、綺麗事を並べて気持ちを隠す。
「あんたを身請けにする。」
この言葉で全て赤に染まったんだ。
