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白の歌姫

第2章 鎖

四限が終わると高橋は別の生徒達が待つ音楽室へ向かう。
柔らかく微笑み、授業を進める。
窓は開け放たれ、初夏の心地好い風が教室に流れ込む。
一人の生徒が窓の外を眺める。
高橋はそれに気付くが、気に留めることもなくピアノを弾き続ける。


高橋は、優しく、かっこいい先生として生徒達から慕われていた。
怒鳴らない、微笑みが素敵な教師。実力は申し分ない。


けれど、彼の耳に届くのはただ一人の少女の歌声だけ。
彼が愛するのはただ一人の少女の歌声だけ。


それは、まるで鎖のように。

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