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白の歌姫

第3章 もうひとつの旋律

高橋とは真逆の旋律。
激しく感情のままに。


梨杏はその音楽室の前で立ち竦んだ。

ピアノの前に、一人の男が座っている。
周りには幾人かの学生がいた。
気楽に窓も扉も開け放し、彼らはそこにいた。

ふと、男が顔を上げた。
目が合う。
梨杏は、その力強い瞳に息を飲む。

「誰だ?」
「…」

『声を出してはいけない』
高橋の言いつけが頭に響く。

梨杏は、その場から走り去った。

「高橋先生の秘蔵っ子ですよ。」
男の側にいた女学生が言った。
「私、あの子嫌いよ。いつも一人で、誰かと話してる所見たことないわ。」

男はふぅんと相づちを打ち、ピアノを再開させた。

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