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白の歌姫

第3章 もうひとつの旋律

張り出し窓に座り中庭を眺める男がそこにいた。
窓を開け放し、風が彼の髪を揺らす。
男は梨杏に気付き、笑った。

その力強い瞳は梨杏を見据える。
高橋のような優しい微笑みとは違う、自信にあふれた笑み。

「おはよう、高橋のお姫様。」
彼は立ち上がり梨杏に近付いてきて梨杏のカセットを止めた。

「結城一真。それが僕の名前。お姫様、君の名前は?」

まるで威圧するかのように目の前で問いかけてくる男に梨杏は震える。

「…、教えたくないならいい。ただ、お願いがあるんだ。
ねぇお姫様、君の歌を聴かせてくれないか?」

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