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白の歌姫

第1章 ひとり

俯き頭を下げる梨杏に溜め息をついて、高橋はピアノにまた向き合う。
「では、また最初からですね。」
梨杏が頷く。

こうして彼女の日常は過ぎていく。


彼女にはクラスがない。
特待生で入学し以来ずっと、彼女は高橋について学んでいる。
この小さな音楽室と自宅を往き来するだけで、学校にいる間も他の生徒とは交わらない。
そして、高橋は彼女にこう命じていた。

『歌う時以外に声を出すな。』

ひとりぼっちの特待生。
ひとりぼっちの白の歌姫。
三波梨杏。
彼女は今日も明日も

ひとり

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