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白の歌姫

第2章 鎖

「じゃあ、今日は終わりにしようか。三波さん、お疲れ様。」
高橋が微笑む。
梨杏は丁寧に頭を下げてそれに答える。
高橋が小さな音楽室から出ると、それを待ちわびていた少女達が取り囲む。
質問という名を借りて彼女らは高橋を追いかける。

一人になった梨杏は、窓の外を眺める。
二、三人で連れ立って歩く生徒の姿。

入学したての頃は小さな音楽室の外に何人かの生徒が待っていた頃もあった。
入試で高橋の一言で合格し、ずっと高橋に教わってきた。
声を出すな、その言葉を守り続け、今は梨杏を待つ人はいない。

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