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白の歌姫

第2章 鎖

梨杏は、小さく溜め息をついて帰り支度をする。
15歳の頃から四年間変わらない日常に、彼女は麻痺していた。
1限から四限まで高橋に教わり帰宅する。
幼い頃両親を亡くした彼女は家でもひとりだ。
小さな音楽室を出ると、一気に雑音が彼女を襲う。
完璧防音の世界から放たれると、その音の多さに驚く。
彼女はサンダルを履き、歩き出す。白のワンピースがふわりと風を抱き込む。あの小さな音楽室では、ワンピースはしぼんだまま。
高橋は、窓を開けることさえも許さないから。

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