いつくしむ腕
第3章 こころの修正液
その日は、二人とも休みだった。
わたしはいつものように優太のアパートへ行き、
いつものように二人でぼんやりと過ごしていた。
「少し、出掛けようか」
優太のその一言が、これからのわたしたちに大問題を起こすとは 誰も予想していなかったと思う。
趣味のサッカー用品を買いに、わたしたちは少し遠くのスポーツ用品店まで車で走った。
優太は運転が上手い。
助手席に乗りながら、わたしは誇らしい気持ちになる。
安定した運転をする男のひとが、わたしは好きだ。
「今日は焼き肉がいいな」
いいよ、とわたしは答えた。帰りにスーパーに寄らなければ。
違和感は、優太の携帯が鳴ったときに感じた。
音が鳴ったから、反射的に優太のほうを見た。
優太は、とっさに手で画面を隠した。
それを見逃せるほど、わたしは鈍くはなかった。
「…なんで、」
呟いて絶句した。
優太。誠実で優しくて真面目な優太。
まさか、まさか、まさか。
「…化粧水、届けてくれる人がいるんだけど 今日こっちに来る用事があるから、届けてくれるって」
わたしの顔を見ずに、優太は言った。
そう、と言ったわたしは、きっと上手く笑えていない。
「でも19時だったら、まだ俺たち家についてないかもしれないから、今日はやめとこう」
どうして、とか、誰なの、とか、聞きたいことはたくさんあったけど、わたしの口から出てきたのは
「そうだよね」
だった。
その後はずっと、心の中が真っ暗だった。
19時なら間に合うのに。
わたしには会わせられないのか。
なにかやましい理由でもあるのか。
頭の中が沸騰しておかしくなりそうだった。
表面上は普通に、スーパーに寄ってアパートに帰って夕飯を食べた。
わたしは心ここにあらずだ。
携帯。
優太の携帯に、事実が詰まっている。
「果夏、俺シャワー浴びてくる」
心臓が波打つ。どくんどくんどくん。
…バスルームに入れば、リビングにはわたし一人。
「かくしごと」の詰まっているはずの携帯を置いて、優太はシャワーを浴びにいく。
わたしはいつものように優太のアパートへ行き、
いつものように二人でぼんやりと過ごしていた。
「少し、出掛けようか」
優太のその一言が、これからのわたしたちに大問題を起こすとは 誰も予想していなかったと思う。
趣味のサッカー用品を買いに、わたしたちは少し遠くのスポーツ用品店まで車で走った。
優太は運転が上手い。
助手席に乗りながら、わたしは誇らしい気持ちになる。
安定した運転をする男のひとが、わたしは好きだ。
「今日は焼き肉がいいな」
いいよ、とわたしは答えた。帰りにスーパーに寄らなければ。
違和感は、優太の携帯が鳴ったときに感じた。
音が鳴ったから、反射的に優太のほうを見た。
優太は、とっさに手で画面を隠した。
それを見逃せるほど、わたしは鈍くはなかった。
「…なんで、」
呟いて絶句した。
優太。誠実で優しくて真面目な優太。
まさか、まさか、まさか。
「…化粧水、届けてくれる人がいるんだけど 今日こっちに来る用事があるから、届けてくれるって」
わたしの顔を見ずに、優太は言った。
そう、と言ったわたしは、きっと上手く笑えていない。
「でも19時だったら、まだ俺たち家についてないかもしれないから、今日はやめとこう」
どうして、とか、誰なの、とか、聞きたいことはたくさんあったけど、わたしの口から出てきたのは
「そうだよね」
だった。
その後はずっと、心の中が真っ暗だった。
19時なら間に合うのに。
わたしには会わせられないのか。
なにかやましい理由でもあるのか。
頭の中が沸騰しておかしくなりそうだった。
表面上は普通に、スーパーに寄ってアパートに帰って夕飯を食べた。
わたしは心ここにあらずだ。
携帯。
優太の携帯に、事実が詰まっている。
「果夏、俺シャワー浴びてくる」
心臓が波打つ。どくんどくんどくん。
…バスルームに入れば、リビングにはわたし一人。
「かくしごと」の詰まっているはずの携帯を置いて、優太はシャワーを浴びにいく。