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SYらぶらぶ集〜X❤︎L〜ゼロリナ

第11章 悲しみに捧ぐリコリスの花束を

誰?
叫ぶような、現実に引き戻すような声に、あたしはハッとする。
色がなかった世界に、また、綺麗な色が戻る。虹色の絵の具を、世界にぽつりと、一滴落としたように。

「っ!イヤ!離して、火炎球!」
「うわああっ?!こ、こいつ魔導師だ。アニキ」
「チッ、分が悪い。ズラかるぞ」

まだ荒れる息。
あたし・・・死のうとした?いま、あいつらに、犯され、殺されてもいいと、思った?
ぞっ、と背筋に寒気が走る。
あの、声がなかったら、あたしはきっと今頃ーーー・・・

「っ・・・あ、ああ・・・っ?!」
「リナさんっ!?大丈夫ですか!!お怪我は!?」

あたしは、初めて声の主を知った。
以前、冥王の計画の際、そして闇を捲くものとの戦いの際、ザナッファーに、タフォーラシアでの魔王の亡霊の件で知り合った魔族。
獣王直属の部下、獣神官ゼロスーーー。

が、焦った様子であたしに近寄る。

「うん・・・ごめん・・・ゼロス」
「いいえ・・・
貴女を偶然見掛けたので声をかけようとしたら、薄暗くて狭い路地に、あんな低俗な人間に手を引かれ大人しく着いて行くんですよ。心配だって・・・・・・



・・・?リナさん」
「・・・な、なに?」

双方の紫水晶の瞳に射抜かれ、動けなくなってしまう。
・・・どうして、そんな全てを見透かしたような目をするの・・・

「やはり。貴女、寝ていないでしょう。いけませんよ、お肌に悪い・・・リナさん?!」
「・・・っ、助けて。眠れないの・・・ずっと、寝ようとした。でも、寝てしまうと毎回・・・毎回同じ悪夢を見るの。見たくないのに、同じ悪夢を。苦しいのは、もう・・・イヤ・・・」

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