SYらぶらぶ集〜X❤︎L〜ゼロリナ
第11章 悲しみに捧ぐリコリスの花束を
ーー何もかも、忘れさせて。
きっと、傷つけた。優しく。そして支えてくれた青年に対して吐くには、余りにも悪質な言葉。
「リナさん、苦しいのはわかりますが、あまり体に負担かけると倒れますよ?」
「・・・っ、ごめ・・・
は?」
あまりにも的外れな青年の真面目に忠告しているだろう内容に、少女は目を白黒させた。
自分の、勝手なわがままに怒った訳ではなく、自分の身を案じての、どこまでも優しい彼の気遣いだった。
「は、って。昨日から果たして何回してると・・・リナさん!?」
「だっ、て・・・ゼロスが怒ったの、てっきり『何もかも忘れさせて』ってあたしの勝手な言葉かと・・・」
おずおずと、申し訳ないように言う少女に、小さく呆れ笑いを零す青年。
ーーーそんなこと・・・気になどしていない。どんな理由であれ、少女のそばにいることを許してくれるのが、一番嬉しい。
例え、自分以外の人間を、一時的にでも忘れるためでも。
「リナさん」
「・・・?なに?」
柔らかく微笑み、少女の華奢な腕を自らへ引き寄せ掻き抱き、人目も気にせず、青年は愛おしくて脆い、少女のくちびるを奪った。
くらくらする、でも。無理やりではない・・・お互いを確認するような口づけを、二人は交わす。
それを。
あの、金色の髪の。
青年が見ていたとは。
ーーいや、きっと、闇の青年は気付いていた。彼がいることに。だからこそ、わざと見せつける様にーー今、彼女を腕の中に収めているのは自分だと・・・そして、今でも彼女を愛おしそうに見る青年に『彼女を手放したのは貴方でしょう・・・?』と、睨めつける。
青年は、ただ、愕然とした面持ちでこちらを凝視したのち、苦しげにうつむき、舌打ちすると、街角へと姿を消した。
それを確認して、ゼロスは彼女を開放する。
「・・・なにするのよっ、街中で」
「あまりにもリナさんが可愛くて・・・許してください。ねっ」
そんな、許さざるを得ない様な青年の可愛らしい謝罪に、リナは意味はないと分かりながらも、まだにこにこと幸せそうに笑う青年の頬を思いっきりつねってやった。
ーーーリナは気付いていない。
ゼロスと、なんともないやりとりをしている内に、さっき見た彼と彼女のことをすっかり忘れていることに。
リナは、少しずつ。
ーーー前に進み出した。