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SYらぶらぶ集〜X❤︎L〜ゼロリナ

第11章 悲しみに捧ぐリコリスの花束を

【第二章】

2.1 感情

『忘れたくない』


と、


『忘れられない』


それは、似て非なるもの。

忘れたくないは自分がただ前に進めないだけの言い訳。
一種の、願望

忘れられないは、記憶。
下手すれば排他すべき記憶なのに、あまりにも鮮烈で強烈で忘れることが叶わないこと

どちらが、大切なんだろうか。

忘れたくない、と。
時間をただそれを記憶しておくために要し、その忘れたくない記憶を保存するため、他の記憶を排除、拒絶するのが幸せなのか。

忘れられない、と。
その記憶に苦しめられながらも、他を吸収し、それでもその記憶は無くならないまま、一生その忘れられない記憶を引きずるのが幸せか。

人間は、忘れる生き物だと。忘却する生き物だと。誰かが説いていた。

では、どうして辛く、悲しい記憶は簡単には忘れてしまえないのか?
楽しく、幸せな記憶はたやすくも崩れてしまうのかーーー

こうも、説いていた。

人は、いつまでも引きずる生き物だと。
そして。今ある幸せに慣れてしまうと、さらなる幸せを要求する、なんともなんともーーーー浅ましく賤しく乏しい、とても可哀想な種族だと。


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