「俺は、男だ!クソ野郎」
第6章 何で俺…女装してんの。
「ちゃんと理由を聞かせてもらうからね」
大悟は、まださっきのことを
覚えているらしい。
あー、理由って
俺が遅れてきたやつのことだよな…はぁ。
『実は、翼先輩と会って、おまけに命令までされちゃいました☆テヘッ』
って、
い、言えるわけねーじゃん!!!!
「無理だから。本当にただ道に迷っただけだっつーの。何回も言わせんな」
ふんっと声を漏らし、なるべく
平然を装う。
「嘘つけ、バカ岬」
「俺はバカじゃねぇよ!本当だ、アホ。それより、俺を降ろせ!」
抱っこされるのは、
本当に勘弁。
俺は、手足をバタバタとさせ、
促した。
「落ち着け、そんなに動いたら危ない。それにこれは、起きなかった罰だから家まで降ろさないよ」
「んだと~っ!」
冗談じゃないぜ。
ただ、目を覚まさなかったくらいで、
知らぬまに勝手に抱っこされて
どうみても俺が理不尽じゃねぇか!!
「このままで我慢しろ。それとも理由言う気になったわけ?」
クソっ。
人の弱みにつけこみやがって!
いつも以上に
タチ悪すぎる。
もし、この状態で
周りのやつ、もしくは知ってるやつに
顔、見られたらバカにされちまう。
…ん?
顔…?
そうだっ!
顔を見られなければ、
抱っこされてるのが俺って誰もわからない!
「ふ~んだ!顔を隠せばこんなの恥ずかしくも怖くもねーわ!」
俺は、そう言って
隠すように大悟の胸に顔を埋めた。
バレなければ、
むしろ、余裕だし!
呑気にそんなことを考える。
「……岬って本当バカなの。可愛すぎだし、そんなのされたら、こっちがたまんないじゃん」
「は?」
小声でよく聞こえん。
「こんな無防備なこと、俺以外の前で絶対すんなよって言ったの。今は本人気づいていないようだから別にいいや」
「なんだよ、それ」
そんな言い方したら
気になるだろうが。