「俺は、男だ!クソ野郎」
第6章 何で俺…女装してんの。
本当、大悟の言っていることが
理解できん。
俺、
そろそろ勉強した方がいいんだろうか?
「あ、抱っこするその代わりに、絶対落とすんじゃねーぞ」
ちょっと顔を上げて、大悟に一応伝えといた。
ほんとは、降ろしてほしいが
そんなの許すはずがなさそうだし。
すると、大悟は、
100点満点の爽やかスマイルで
ふんっと鼻を鳴らして笑った。
「おい、聞いてんのか?」
急に笑った大悟を
不思議に思って聞き直した。
さっきの笑い、なんか
完全に俺をバカにした感じだったが気のせいだよな。
そう思ったら、至近距離で目が合う。
「え、何…」
そんな顔を覗き込まれても
困るんですけど…。
「そんな可愛いお願いされちゃあ、一生こうやって抱き締めていたくなる」
愛おしそうな目で俺を見る眼差し。
きっと、女子が見たら
イチコロなんだろうけど…
男の俺からしたら
正直、やめてほしいくらい。
それにお前はバカか。
「こんな恥ずかしい格好一生できるかよ。今だけだっての。…ほら、こっちは我慢してんだから早く家まで送れ」
最後、命令口調になったが
今はそんな気にしてるほど余裕がない。
ただ珍しく人が通ってないだけ
運のつき。
「はいはい、じゃあこのまま力強くしがみついとけ」
大悟は、嫌な光を宿して
ニヤリと微笑みながら言った。
その笑みに
内心ギクリと体を強張らせてしまった。
「嫌だ。大悟が俺を力強く抱き締めとけばいい話だろ」
そう眉を寄せて言うと、
大悟は『天然…』と小さく肩を揺らしていた。
「?」
俺は、訳もわからず
首を傾げることしかできない。
何で笑うんだ?
俺は、ただのんびりしたいだけでそう言ったのに
笑うとこないよな…?
「そういうの俺以外の前で言わないで」
『これ重要』と大悟が念を押す。
「は?」
「理解力ないってのが問題だよな…岬は」
なぜか、大悟は
深くため息を吐いていた。