「俺は、男だ!クソ野郎」
第6章 何で俺…女装してんの。
「岬の部屋、久しぶりだ」
部屋に入った途端大悟は、躊躇なく、
ベットに近寄って腰を下ろした。
お前は、
遠慮というのを知らないのか。
「…勝手にくつろぐな」
母さんめっ。
外見しか見ないで、ほいほいと危ない奴を入れるな。
被害に合うのは俺なのに!
とりあえず、机の上にカバンを置いて
なるべく大悟との距離をとる。
「なぜ、そんなに離れる?」
ギクリッ。
勘の鋭い大悟は、もう気づいたみたいだ。
「い、いやそんなつもりはないけど…なんとなく」
おい、俺。
いつもの強気はどこ行った?旅行か?
「ふ~ん…まぁいいや」
その言葉を聞いて
ホッと肩を撫で下ろす。
特に気にしてないみたいだな…ふぅ。
でも、ジロジロこっちを見んな。
「…それより」
帰ってきたばかりだから、窓も閉まってるので
いつも以上に静まり返っていた部屋に
さっきとは、明らかに大悟の声のトーンが低くなったのがわかった。
「え…なに?」
冷や汗を流しながら
恐る恐るたずねる。
それに急に、声が低くなるとか
おかしくね!?
殺気?っていうのかな…
めっちゃ、なんか怪しい空気を纏ってるんですけど!
「俺…岬にどうしても聞かなきゃいけないことがあるんだよね」
ニッコリ。
と、俺の苦手のあの笑みをされた。
「へ、へぇ。そんなんだ~。そういえば、飲み物持ってくんの忘れてた。今から持ってくる」
ははっと苦笑いをして、
逃げるように部屋の扉の方に歩いた。
ガシッー
「え。」
なにこれ
前に進めない。
「…逃げるの?」
耳元にそう囁かれた。
ふと首だけ後ろを向くと
そこには、あの笑みのままで俺の手首を掴んでる大悟の姿があった。
「だ、大悟なに言ってんの?逃げるなんて…んなわけのわからねーことしねぇよ」
今にも震えそうな声を押さえて
冷静を保ちながら言い張った。