「俺は、男だ!クソ野郎」
第6章 何で俺…女装してんの。
今まで、あんな大悟を見たのは、
初めてかもしれない。
傷ついた表情なんて見たことなかった。
「なに…この変な感じ」
俺の首を噛んで怒らせた大悟が
悪いはずなのに…
なんで俺がこんな複雑な気分に
ならなきゃいけないんだ。
俺にだって、
非があるのはわかっている。
よくよく考えてみれば、
少し言い過ぎたかもしれない。
そして、かなり酷い言い方した。
あっちは、ただ俺のことを
心配してくれただけ。
なのに、関係ないとか怒鳴りつけて…
一方的に大悟を傷つけたんだ。
俺も
大悟に同じこと言われたら
ショックで落ち込みそう…。
隠し事は確かに嫌だ。
あぁ、こんな首の痛みなんか
犬に噛まれたと思って放っとけば良かったんだ。
赤くなっている首筋に触れながら
そう思った。
大悟がしつこいのは、もう昔から変わらないことで理解していたけども…
なんか、なんか…
ああして引き下がった大悟に、
こう、モヤモヤしてくる。
これって、言った後悔って
いうやつかな?
それともいつもと違う大悟に
戸惑ってるだけ?
はぁ…どっちにしろ
俺のバカやろう。
俺は、数時間もずっと、
大悟が出ていったドアを見つめてた。
…もしかしたら『さっきの冗談』と笑って戻ってくるかもと思いながら。
でも、そんなことなくて
気づいた頃にはもう夜になっていた。