「俺は、男だ!クソ野郎」
第6章 何で俺…女装してんの。
お姉さんが言っているその子とは、
きっと俺のことだろう。
なにせ、こっちをキラキラした目で見てるから。
しかも変えるって…
あぁ、女装の話か。
はぁ。
女の人に女装させられるとか
なんという屈辱。
俺は、もう嫌だと言わんばかりに
肩を竦めた。
「うん。そうだけど、やっぱり咲さんに頼むの心配になってきた」
翼先輩は、
不安気味にそう言った。
お姉さんの名前、
咲さんって言うんだ。
俺も岬(みさき)だし、
一応、同じ“さき”があるから
妙に運命感じる。←
「どうしてよ~?」
「まぁでもしょうがないか…。あっ姫、また顔をぶつけちゃってごめんよ~」
翼先輩は、しゃがんで
俺のおでこを触りながら謝った。
語尾伸ばすな。
ムカつくから。
「痛かったぞ、アホ」
「だからごめんってば~」
謝ってるわりには、なんで
そんな笑顔なんだ。
こいつ、反省の欠片もない。
「コラ、そこイチャつかないの!」
咲さんの急な意味不明の言葉に
俺は、え?となる。
そして、そのままの状態で咲さんは、
俺に近づいてきて
「あ、それより自己紹介まだだったわよね。初めまして私、有岡咲です。よろしくね、姫ちゃん?」
と、眩しい笑顔で
自己紹介をされた。
ヤバイ…。
久しぶりに母さん以外の女の人と
話すから緊張する。
「お、俺は、杉本岬っていいます。ちなみに姫じゃないです。それはコイツが勝手に呼んでるだけなんで気にしないでください」
ぺこりと頭を下げ、
落ち着いて俺も自己紹介した。