「俺は、男だ!クソ野郎」
第6章 何で俺…女装してんの。
♪~♪~
「あっ」
この音楽、俺の携帯の着信音だ。
さっき着替えて
そのまま放置していた。
慌てて脱いで畳んでおいた
俺のズボンのポケットから
携帯を取り出した。
そして画面を確認すると、
“橋川 翼”の文字。
チッ。
こいつか。
心の中で舌打ちする。
よし、例の復讐をさっそく始めるか。
「もしもし、田中ですけど、どちらさん?」
どや。
田中ですけど?攻撃。
『田中?いやいや、その可愛い声は姫だよね。まさか、俺のいない間に他の野郎と結婚届けを出して苗字変わったとかないよね?それだったら本気で怒るよ』
…あれ?
なんか、
こ い つ 危 な い 。
「…はい、杉本です」
俺は、もう諦めモード。
素直に名乗る。
…復讐は、失敗だ。
くそ。
『やっぱり、騙してたんだな~。そうだよな、姫は、田中より“橋川”だもんな。うんうん』
はいはい、俺は、
何も聞いてないし、何も聞こえてません。
「で?何」
『照れてるのか。あ、そろそろそっちに着くから、お店の入り口で待ってて』
「へーい。わかりやした」
俺は、口を尖らせながら
適当に返事を返す。
『くれぐれも誰かに声かけられても無視するんだよ?』
「は?ここには知り合いいないから大丈夫だけど…」
『そうじゃなくて、絶対ナンパされんじゃん。俺がそれ嫌なの』
「は、はぁ…」
『おっと、その反応は理解してないな。とにかく守ってよ!あぁ姫の女装…なんか鼻から赤い液体が』
ブチッ。
ごめん。
切っちゃった。
俺、多分
これ以上、聞いてたら完全携帯壊してたかも。