「俺は、男だ!クソ野郎」
第8章 ドキドキが止まらない。
「ぼ、暴力反対だ。何で俺が姫に近づいたらダメなんだよ」
「自分を呪え」
「なにそれ!?」
大悟は、まだ俺の手を握ったまま翼先輩と争っている。
翼先輩は、俺が嫌がっているっていう話を
ちゃんと聞いていなかったみたいだ。
たく、都合のいい耳してやがる。
「岬」
すると、大悟が俺の名前を呼んだ。
何時にない、大悟の熱のこもった眼差しに、
ぞくりと背筋が震える。
殺気はどこに行った?と思わすほどの変わりようだ。
どう言葉を返したらいいか戸惑う俺の表情を見て、
大悟は、小さく笑った。
『ちょっと耳かして』と苦笑する大悟に
自然と入れていた肩の力を抜いた。
そして、耳を身構えてた。
「少しの間、目を閉じてろ」
大悟の言葉通りに目を閉じたら、
その途端に、
翼先輩のまたも痛々しい声が聞こえてきた。
大悟のやつ、派手にやってるな…。
多分、目を閉じてる意味ないかも。
いやない。
だって、音だけでわかってしまうし、
想像できちまうよ、これは。
それに器用だよな。
俺と手繋いだままだし。
「さぁ、戻るぞ」
大悟は、何事もなかったように俺の手を
やんわりと引いて歩いて行った。
最後に見えた翼先輩は、
地面に転がっていた。