「俺は、男だ!クソ野郎」
第10章 …こんなの俺らしくない
「…っ」
「あー、怯えちゃって…可愛いね」
「こ、こっちくんな!」
ぎゅっと布団を掴む。
「そう言われたら、余計来たくなるでしょ」
あの時の淳兄が甦る。
こ、怖い。
自分でも気づかないうちに
震えだしていた。
人が違うようで本当に淳兄なのかと疑ってしまう。
や、やだ…。
「岬…?」
淳兄の手が近づいてくる。
「…っ」
俺は強く目を閉じた。
きっと、殴られる。
そう思っただけで恐怖が襲ってきた。
…あ、れ?
なにもこない?
不思議に思った俺は
片目だけ、うっすら開けた。
そしたら。
「…何?俺が岬に暴力振るうと思ってるの?」
と、笑われた。
「え…?」
「今日は、岬に用があるって言ったでしょ」
いつも通りの淳兄。
その柔らかくて優しい笑顔は俺が知っている淳兄だった。