涙話 -Beeindruckt sein-
第1章 仮面夫婦生活
「お父さんはっ…お母さんの…こと…嫌い…??」
泣いていて潤んだ目で俺に娘は聞いてきた。
正直、妻にそこまで俺のことを思っていてくれたなんて驚いたし、
子供にもしかして負担をかけてしまっていたんではないか…と
色んな想いが寄せてきて、考えられなくなった。
娘に一人にしてくれ…と頼むのが精一杯だった。
確かに、妻は良い母を務めてくれた。
無駄遣いなく生活費を使いこなし、
苦手だった家事を克服したどころか、
子どもから妻の弁当は評判が良いとも言っていた。
子供たちのために離婚はしないと言ったものの、
立派に育ててくれたのは妻のおかげだった。
妻を許すべきなのか、
しかし、一時的にせよ他の男を愛した妻だ、
ここで許すならば最初から許してればもっと幸せにこれたのではないか、
俺が許したとしてこれからどうすれば良いんだろうか
と色んなことが頭をよぎり、俺を苦しめた。
そして結局も俺は結論をまた出せず、
灰色の日々を送った。