涙話 -Beeindruckt sein-
第1章 仮面夫婦生活
退院後、俺は常に妻の側へといた。
その時間は皮肉にも仮ではなく本当の夫婦のようだった。
妻は奇怪な行動をとったりもせず、自分で家事もこなしていたが
俺は側にいた。
もちろん医師からの指示というのもあったが、
俺がそうする必要があったと思ったからだ。
しかし、妻は俺と関わるのを嫌がっているようで、
素っ気ない態度をとるようになった。
きっと妻も思うことがあったんだと思う。
時々見せる、涙を堪える目を見るのが俺はツラかった。
どうしてこんな辛いことになってしまったんだ、
と妻の見えないところで子供のように泣いてしまった。