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君がいたから-優輝ver.-

第3章 痛み

遠くで声が聞こえた。
火事だ、と聞こえた気がした。
だけど、どこかで聞いたような声。
周りの奴らは慌てふためいて逃げていってしまった。

水をかぶっていたが、頭を抑えていた手がなくなった今、
俺の頭は自由になった。
頭をバケツから出すと同時に、俺はその場に倒れこむ。


次に目が覚めたときには恐らく白いベッドの中だろう。
そんな冷静にこれからのことを考えつつ、暗闇に落ちていく。
落ちる寸前、本当に近くに、あかねと沙彩ちゃんがいる気がした。
それがとても安心できた。
・・だけど、なんでここにいるんだ・・?
危ないじゃないか、火事だって・・聞こえなかったのかな・・。

火事だと伝えなきゃいけないのに、ダメだな。
水攻めって苦しいんだな。
さすが拷問ってところかな・・?

そこで俺の意識は途切れた。


       ・
       ・
       ・
       ・

気がつくと、そこは保健室のベッドだった。
窓際のベッドに俺は寝かされていた。
起き上がろうとすると変にくらくらする。

「~~~~!!」

声にならない声をあげて抱きつく二つの影。

「・・?沙彩ちゃん・・とあかね・・?」
「そうだよぉ!もう!バカ優輝!!なんで一人でいくのよ!」
「泣くなよ、うるさいな・・w」
「優輝くん・・無事でよかった・・。どこか痛いとこある・・?」
「ううん、特にないよ。・・あ。そうだ、火事!火事が!!」
「・・ぷっwww」

吹き出し笑いをしたのはあかね。
その次に二人でおなかをかかえて笑い転げている。

「な、なんだよ!?」
「あれは、咄嗟だったとはいえ、驚いたわぁ。」
「え、でも・・あれで事が済んだわけですし・・」
「え?え?どういうこと!?」
「あれは、沙彩ちゃんのでまかせ。あれがなかったら優輝は死んでたかもよー?」

そうか・・。
じゃあ、火事はなくて・・
あれ・・?ってことは・・最初からついてきてたってことか・・。
危ないのに、なんだか申し訳ないな。

「二人とも、ありがとう。」

でも、今はこれだけで充分だろう。
他に何か言えばあかねに噛みつかれそうだから。

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