檻の中の女
第6章 信頼
「そうだよ。
おばあちゃんと一緒に住んだんだ。」
「それは…その、大丈夫だったの…?」
私がためらいながら聞くと、
詩織は悲しそうに微笑んで、
「…難しかった、よ。
おばあちゃんはお父さんを本当に愛してたから。
そのお父さんが死んで、絶望してた。
お前の母親のせいで、あの子は死んだんだって。
毎日のようによく言われたよ…」
「そんな…ひどい!
詩織もお母さんも悪くないのに!」
「いいの…。
おばあちゃんの気持もわかるの。
本当に悲しいことがあったとき、
誰かを憎んでいないと、
悲しみに覆い尽くされちゃいそうな、
そんな気分になるの。
おばあちゃんは、私やお母さんを
憎むことでしか、悲しみから逃げられなかったのよ…。」