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ワールドアパート

第2章 僕への頼みごと

先生はふぅとため息をつき
腕を組んで僕を優しい目で見つめた

「金額ではないなら、何がダメかね?」

僕は声が震えるのを堪えて
精一杯、普通に話し出す

「まるで犯罪のようです。僕にはできません」

止まれよ冷や汗…
先生にバレる
弱みを見せると付け込まれる…


「残念ながら犯罪の片棒を担ぐ様なことは君にはさせないよ安心しなさい」




僕の身体から少し冷や汗が引いたのを感じた

「では、どうして僕に…なぜそんな高額なんですか?」

仕事を受ける気はなかった

しかし興味はあったら


先生は穏やかな表情を
一瞬たりとも崩すことなく
また、紅茶を一口。


「ハヤセ レオナを知っているかね?」
出て来たのは見当もしていない言葉

面食らいながら僕は考える

ハヤセ…ハヤセレオナ…
僕の記憶回路をくるくる回る

ハヤセ…速瀬…

速瀬玲於奈か!!

単語は確実に漢字に変わり
僕は記憶をたどる


「速瀬玲於奈さんは確か生物学者です。若くして亡くなられましたが…天才だと言われていたと」

先生はホッとした顔をした
「やはり知っていたか…しかし15年前に死んだ学者の名前を良く覚えていたね。彼に関する文献は少ないだろうに」


「男性で玲於奈って名前は珍しいですから…インパクトがあって覚えてます」
自慢できる理由ではなかったから言いたくはなかった…

「まぁしかし、玲於奈というのは男につける名前だ。たまに女性でもいるがね」


僕は話の本題を思い出す

先生に出された紅茶を飲み、気分を落ち着かせ質問した
「速瀬玲於奈さんが関係するのですか?」




先生は深く頷いた

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