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フーセンガム

第30章 隣

(櫻井side)

和也がいない景色は、濁っていた。

隣には、いつも和也がいた。

そのありがたさがわかっていなかったんだ。

『同居しよう』

そう約束したのは、俺だ。

『愛してる』

言い出したのは、俺だ。

和也に向けた言葉は、すべて素直な気持ちだった。

学校なんて、行ってる暇なんてない。

和也に会いたい。
今すぐ、この手で触れたい。

知らずの間に、和也の家に来ていた。

ドアの前で立ち尽くしていた。

チャイムを鳴らす、勇気もなかったから。

そんなとき、ドアが開いて和也が出てきた。

ニ「…なにし」

その口を塞いだ。

最後のキスだ。

この唇が離れたときが、本当の終わりだ。

そう思っていたのに、和也が背中に手を回していた。

胸がはち切れそうになった。

直感でわかった。

和也はまだ、俺のことが好きだ。

このまま、キスをし続けて離れることを忘れようか。

このまま、連れ去ってしまおうか。

このまま…抱いてしまおうか。

「っは……ごめん」

自分にストップをかける。

もう、元には戻れない。

和也をまた傷つける。

好きなのに、離れた。

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