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フーセンガム

第30章 隣

(二宮side)

まだ、熱帯びている唇。

制服越しに残る、翔の体温。

なんで、別れちゃったんだろう。

気づいたんだ。
翔のいない世界は、色褪せて見える。

翔が、俺のみる景色に色をつけてくれたんだって。

「…好き」

好きだ。
大好きだ。

会いたい。
もう一回、触れてほしい。

授業を終える、チャイムが鳴る。

先「おい!二宮!」

号令が、かけられる前に教室を飛び出す。

階段を下って、3年生のフロアを走る。

ガララッ!

「翔っ!」

教室のドアを勢いよく開けた。

櫻「和也…」

暗い顔をした、翔がいた。

「翔…」

泣きそうになる。
翔は、俺をみると必ず笑顔を向けてくれるのに…。

櫻「…ごめん」

翔は、うつむいてしまう。

教室にいる、先輩達に目もくれず一直線に翔のもとへ歩く。

他クラスの浸入は禁止されているけど、誰も言葉を発しなかった。

「翔のバカっ」

翔を抱き締める。

座ってるせいで、翔の頭が腕に収まる。

櫻「…かず」

『和也』

そう言おうとする口を塞いだ。

教室は、ざわついた。

翔の両頬を手で包み込んだ。

少し、涙で湿っていた。

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