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フーセンガム

第57章 illumination②

(哀川side)

智と翔が、潮風を浴びに行った頃。

グワンッ…。

船が大きく揺れた。

部屋の外からは、悲鳴が聞こえる。

その悲鳴に比例するように、
再び船が大きく揺れた。

さすがにヤバいと、部屋のドアを開けると大量の海水が流れこんでくる。

「ど、どういうことだよ…」

幸いなことに、海水はまだ膝下までしか浸かっていない。

バシャッと音をたてて、進む。

水上には、ボートが浮いている。

救命ボートか。

そこで、俺は見渡す。

……智は無事だろうか。

海水は、もう腰まで浸かっている。

櫻「智!早く!」

必死な翔の声が聞こえる。

大「嫌だよ!冬斗がっ!」

翔はボートに乗って智を急かしている。

櫻「大丈夫だ!冬斗はきっと助かってる!」
大「嫌だよ!冬斗を置いていけない!」

海水に紛れているが、智は泣いている。

「智」
大「冬斗!」
「行きな」
大「でも、もうボートには一人しか乗れないんだよ」
「大丈夫。」
大「冬斗を置いていけないよ!」

智は、俺に抱きつく。

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