テキストサイズ

フーセンガム

第70章 色褪せる愛

(櫻井side)

どうすればいいのかわからなかった。

あんなに辛そうな和也は、初めてみたしあんなに俺を拒絶するなんて…。

頭が真っ白になった。

目の前には、さっきまで俺がいたトイレのドア。
中からは、聞いてるだけで胸が痛くなるような嗚咽。
辛そうな、呼吸。

「…和也!和也!」

ドアが開かないことに、今更気づいてドアをたたき名前を呼ぶ。

ニ「やめて!やめてよ!」

向こう側から、ドアを力強く叩く。



どうしたの?

なんで、俺を拒絶するの?

どうして……俺の手を避けるの?


いくら考えても、答えが見つからない。

「和也…俺、なんかしたかな?」

聞くと、ずっと鳴っていたドアを叩く音が止まる。

「なにした?教えてほしい」
ニ「…嫌いだ。翔なんて…大嫌いだ!」

俺が嫌いなら、なんで泣いてるんだよ。

「和也…」
ニ「……俺だけだと思ってたのに」
「え?」
ニ「俺だけが、翔のものだと思ってたのに…」

なに言ってるの?
ずっと、そうだよ。
和也だけが俺のものだよ。

ニ「信じたいよ…。けど、疑いが溢れて止まんないんだよ…。好きなのに、愛してるのに、止まんないんだよ…」

ゴンっとドアに体重をかける音がする。

ニ「助けて…、この疑惑のループから俺を助けて…」

その言葉を聞いてから、和也の返事を聞くことはできなかった。

返事の変わりに聞こえるのは、
痛くて、辛い、嗚咽だけだった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ