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フーセンガム

第76章 手を叩け

(二宮side)

結局、翔の家に来てしまった。

「ここ…」

俺と住んでた場所だ。

「奥さんと住んでるの?」
櫻「ううん。ここは、書斎」
「ふーん…」

俺と住んでたこの場所が、今では書斎になってんだ。

櫻「なんだその見下す目は」
「別に。」

少し、寂しかった。
もう、俺とのことは割り切ってるんだ。

櫻「書斎ってのは、表向きで和也が帰ってくるまで待ってた。」

「はい?」

今、なんて?

櫻「和也を待ってた」
「…バカじゃねぇの?」
櫻「和也、好きだ」

何を今さら…。

櫻「一緒に…」
「無理だよ!」
櫻「和也…」

翔の手を叩く。

「翔には、奥さんがいるでしょ!?俺より大切な人がさ!なんで、なんでそういうこと言うわけ!?」

泣いてた。

この涙が、まだ翔が好きって訴えてる。

櫻「…ごめん」
「なんで、なんであのとき…止めてくれなかったの?」

俺は、翔と別れたあの日を思い出した。

「待ってたのに…翔が迎えにくるの…待ってたのに…」

きっと、
「今さら、なに言ってんだ」
って思われてる。

それでもいい。

「また…愛して欲しかった…」

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