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フーセンガム

第6章 初日

(櫻井side)

カツカツ、とチョークの音が静かな教室に響く。

先生の声が、遠くのほうに聞こえる。

それはきっと、二宮くんのことを考えているからだと思う。

まぁ、今日の授業は塾でやったから聞いてなくても大丈夫。

今日の朝。
雅紀を優しい目で見てた二宮くん。
智に抱きつかれてた二宮くん。

……隙がありすぎるのかな?

ちょっと心配だなぁ…。

ダンッ!

机が叩かれ、体がビクッと大きく跳ねた。

先「櫻井、聞いとんのか!」
「あっ、すいません…。聞いてませんでした」
先「聞いてろ、ボケが!」

うわっ、怖っ。

でも、授業は聞かない。
てか、聞こえない。

「………あっ」
先「なんだ、櫻井」
「何でもないです。ペンが落ちただけですから。」

胸ポケットからサッとペンをだして、机の下に身を屈める。

先「お、そうか。じゃ、続きいくぞ」

ふぅ…セーフ。

よしっ、考えるか。

さっき気付いたけど、俺の呼び方を変えてもらったんだから俺も変えるべきではないか。

じゃあ、なんて呼ぼう。

『和也』?
『にの』?

……どうしよう。

先「櫻井…聞いとんのか」
「へ?」

ぽこっと教科書で頭を叩かれる。

「いてっ」
先「勉強せい!」
「………はい。」

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