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フーセンガム

第80章 だからこそ

(二宮side)

昔は、がむしゃらだったんだ。

好きなものを『好き』と素直に言えた。

でも、今はできない。

大人ってこんな感じなのかな…。

新「和也」
「あ、新か」
新「なんだその残念感」
「ふふっ」

俺は、大学に入るとマフラーを外した。

新「なぁ、何があったんだよ」
「えー?なんでも」
新「嘘だろ?何があったんだよ」

新が言うには俺が急に明るくなったらしい。

「なんにもないって」

携帯がポケットで、激しく振動した。

画面をみると、『櫻井翔』の文字。

「えへへ、もしもし」
櫻『あ、和也忘れもん』
「え?なに忘れてる?」
櫻『首、見てみ』
「ん?…あっ!」

ネックレスがない!

「ご、ごめんなさい…」
櫻『ふふっ、謝らないでいいよ』

あ、怒ってる…。

「ほんと、ごめん」
櫻『いいよ。洗面所にあったから風呂のときに外したんでしょ?』
「そうだけど…」
櫻『早く帰っておいでね』
「あ…う、うん」
櫻『愛してるよ』
「うん…俺も…」
櫻『大丈夫。怒ってないから』

口調が急に優しくなる。
これは、翔が怒ってる証拠。

「あのね、俺はネックレスなくても翔と繋がってるって思ってるからね。あ、言い訳じゃないからね」

恥ずかしくも、言葉にした。

櫻『…大丈夫。俺もだよ』

翔が、優しく微笑む顔が頭に浮かぶ。

「じゃ、またあとで」
櫻『うん』

プチっと電話が切れると、急に寂しくなる。

「はぁ…」
新「誰?」
「新には、関係ないでしょ?」
新「アイツか。『櫻井翔』か」
「…えっ」
新「ふーん、そういうことね」

新は、駆け足で教室に入った。

「はぁ…」

なんか、踏んだり蹴ったりだな…。

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