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フーセンガム

第80章 だからこそ

(櫻井side)

夢をみた。

和也と離れる夢。

でも、これ前にあった気がする。
夢じゃなくて、現実で。

ニ『もう翔のこと好きになれないから』

あ…2年前のあの日だ。

昔のことを、夢で見てるんだ。

夢の中の俺は、なにも言わずに固まっている。

和也から見るとこんなに情けなかったんだな…。

夢の中の俺は、和也を見てることしかできてなくて自分自身を情けないと思った。

「んっ……」

知らない間にこたつの中に潜っていた。

電源落としたから、寒かったのか…。

ぽけーっとしてると、玄関が開く音がして家に駆け足で入ってきた。

ニ「翔!」

あれ?和也?

ニ「翔!返事してよ!」

ドアが開く音が何回もして、俺を呼ぶ声は徐々に小さくなった。

「ん?和也?どうした?」

こたつから出て、ベッドに身を投げていた和也に声をかける。

ニ「翔!」

目が合うと、俺の胸に飛び込んできた。

「うわっ…どうした?」

頭を撫でる。

ニ「よかった…いた…」

ぎゅーっと抱きついて、呟く。

ニ「いないかと思った…」
「ごめん、寝ちゃってた…」
ニ「だから、電話もメールも気づかなかったのか…」

電話?メール?

「あっ!迎えいけなくてごめん」
ニ「いいよ。翔が家にいてくれただけで…俺は嬉しいから…」
「俺は…」

大人になると、みんなが恐れる。

素直な気持ちを伝えることは、
大人にとって物凄い勇気がいること。

いくら愛してたって、言葉にしなきゃ意味がない。

「和也を、一人になんてしないよ」

やっと出た言葉。

ニ「ありがとう…翔…」

和也は、俺の言葉にお礼を言って再び強く俺を抱き締めた。

俺は、和也の背中に手を回し更に自分に密着させた。

和也は、少し震えてた。

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