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年上のカノジョ

第6章 雨の中で

あ……まさか、別れ話ってことか…?

付き合ったこともない俺にはわからないけど、遥の様子からすると、たぶん別れ話なんだろう。抱き合うほど好きなのに、別れなくちゃいけないなんて、そんな事情があるだろうか。

お子ちゃまな俺にはわからない。

再び、彼氏が何か言うと、遥はゆっくりうなだれるように頷いてそっと下を向いた。必死で何かをこらえているような遥に、俺は心の中でエールを送った。

遥の頭をポンポン、と撫でた彼氏は、そのまま向こうへ歩き去った。
遥のほうを一度も振り返ることなく…



ただ、俺は気付いてしまった。

彼氏の、遥を抱きしめておきながらも振ったその男の左手の薬指。

そこに、銀色に光る輪がはめられていることに。



っ…!!何だよ、あいつ!!結婚してるくせに遥と付き合ってたのか?!



こんなに激しい感情が自分の中にあるなんて知らなかった。

遥がそこにいなかったら、あいつを追いかけて行って殴ってやりたい。

手のひらに爪が食い込むのを感じながら、俺は激しい怒りに耐えた。

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