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年上のカノジョ

第6章 雨の中で

どれくらいそうしていただろう、遥がゆっくり俺から離れるようなそぶりを見せた。
随分落ち着いたようだし、もう抱きしめる必要もない。



…残念だけど。



「少し落ち着いたか?」

「うん…ありがと…」

「………」

「………」

気の効いた言葉が出てこない自分が情けない。

それでも何か言わなくちゃ、とない知恵をふりしぼる。
そしてやっと出てきたのは。

「遥ならすぐにもっといい彼氏できるよ」

言ってしまってから、何てありきたりな一言なんだろうと撤回したくなった。

「…気をつかってくれて、ありがとね」

遥が困ったように小さく笑った。

…そうじゃない!
別に気をつかって言ったわけじゃなくて!

「気ィつかったわけじゃないし。遥、マジで可愛いと思うし」

「……!」

遥が驚いた顔で俺を見る。

あああ、何言ってんだ、俺!これじゃまるで俺が告ってるみたいじゃないか!

「あのっ、違っ…それは、その……」

あたふたする俺に遥はふんわりとした笑みを見せ、「ありがとう、祐樹」とかみしめるように言った。

「帰ろっか」

「お、おう」

遥の言葉に俺はぎこちなく従う。

何はともあれ、遥の元気が出てよかった……のかな?

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