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妖魔滅伝・団右衛門!

第4章 足軽退魔師団右衛門

 
 優しくするだの大事にするだの、団右衛門は簡単に口にする。しかしそれは軽口ではないのだと、嘉明は身を持って感じていた。

 嘉明は着替え、団右衛門を自分の部屋に寝かせたまま清正の寝所まで足を運ぶ。そして戸を開き、有り得ない光景を目にすると固まった。

「お、おう、嘉明」

 清正も酔っているのか、頭を抱え辛そうな表情を浮かべている。そしてその傍らには、虎が寄り添っていた。

「……いつから、虎を飼いだしたんだ?」

「あ? 違う違う、これはお前の猫又だ。団右衛門が大きくしたんだよ」

「大きく、出来るのか?」

「なったんだから出来るんだろう。とにかく、俺が持ち込んだ訳じゃない」

 嘉明はしばらくその場に立ち尽くし、猫又だったものを眺めていたが、虎が子猫のように鳴いて呼び掛けると中に入る。そして恐れる事なく、その頭に手を伸ばした。

「大きいのも悪くはないが、このままでは食事を用意するのが大変そうだな。元に戻せるのだろうか」

「さあな。それは団右衛門に聞いてくれ」

 嘉明はひとしきり虎を撫でると、酔いで顔色の優れない清正に訊ねる。
 

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